”ファットバイクという乗り物は、とても地球の引力を感じる自転車である”
ということ。
家を出て、家の前の道を北へ向かって峠のてっぺんまで5kmぐらい。
緩やかに峠のふもとまで登り、峠はまあまあいい感じの斜度で上がって行きます。
よく峠を登るおかげで、なんてことはないと感じているいつもの峠が、ファットだと、その重さ故、ちょっとの傾斜でもグイグイと地球に引っ張られている、つまり後ろに引っ張られている感じが、本当にものすごくカラダに感じました。
なので、峠のてっぺんにつく頃には気温1度とは思えぬ汗をかきました。
逆に、その感じる地球の引力が平地や下りでは最高の安定感になり、トレイルのガレ場でも多少の石や岩でも何のその、グイングインと障害物の上を転がって行きます。
”遠慮とへっぴり腰は要らないぜ”と気持ちがとても大きくなれます。
そして、ビビらなくていいのはすごく楽しい。
けれど、雪上で滑らぬよう設計された上等なタイヤは、濡れた木の根に弱い。
木の根っこだけは、チュルチュルと横滑りします。
そして、ちょっとでも滑ると、やっぱその大きさと重さ故、立て直すのに上半身の力が要ります。
悪路で暴れる自転車を安定させるために、いつものマウンテンバイクで走るより、グッと力が要ります。
ルートを選ばず、地球の引力に身を任せ、ドドドドド!と山を駆け下りられるのはとても魅力的。
けれど、15kgを越える自転車は膝丈くらいの獣避けの電気ピリピリ線を担ぎ上げるだけでヒイコラなるわけで。
ファットバイク愛好家のプッシュする”良い所”は全部良い所として感じられたのですが、一長一短ですね。
京都の、ワタシのホームトレイルでは。
たとえばこれが、ワタシの生まれ育った濃尾平野のど真ん中であれば話は変わってくるでしょうし、東京都心の大きい公園や246の途中のアップダウンくらいなら、引力と友達になって慣性だけでものすごく楽しめるでしょうし、パグスレーやマクラクが生まれたミネソタの地には峠なんてものはない訳で。
さらに言えば、例えばワタシが自動車を持っていて、峠の向こうのもっといいトレイルの続く地まで自動車で行けて、だらだら続く山道を楽しめればいいのですが、現実エンジンは自分しかないわけで。
トレイルカッターのガイドツアーのように山のてっぺんまでバスで送迎してくれるようなそんなシチュエーションなら最高なのにな。
と、ファットバイクの活躍できる場面は容易に想像できます。
すべてワタシの今の技量と環境の元であり、一個人の感想です。
自転車を選ぶのはとても難しい。
156cmという身長は、自転車のマーケットでは極々少数派であり、こうやって試乗車が巡ってくることは今まで一度もなかったのです。それを、酔狂なS氏が自分の欲求を満たすためだけにマクラクの小さいサイズを買い、ワタシに与えてみて、乗る姿を見、喜ぶ。自身の持つパグスレーと乗り比べ、違いを実感し、喜ぶ。
なんか間違ってるような気がしないでもないですが、すごく経済と気持ちが活性化されているのは言うまでもありません。
そして、なんやかんやいいつつも、マクラクと違ってパグスレーのXSってどんな乗り心地なんやろうなあと、妄想を膨らませる自分がいます。