職人技
2012年 05月 08日
年末に、大切にしていたコップを割ってしまいました。
コゼバッグをはじめた時に、友達から「自分が持っているよりいいから」ともらった物です。
ずいぶんと”使った感”のあるコップをもらって、この友達はやっぱり変わってると思い続け、さらにしばらくずっとその価値をしらずに使っていたのですが、ある時ふと、このコップがいいモノである事を知り、さらに”コゼバッグをはじめた時にもらった”事もあって、仕事をする時にはミシンと同じくらい大切なものになってました。
が、割ったのです。
まさに膝から力の抜けた瞬間は、今でも忘れません。
”もう、コゼバッグもこれで終わりだ”と、心の中でも何かがパリンと割れた音がしました。。。
いつもいつもお世話になっている古美術上田のおかみさんに相談し、こんなに割れてしまったら、自動車ならば全損事故。もう諦めなさいと言われながらも、おやじさんからとある”金属店”を紹介してもらい、持ち込みました。
高すぎる敷居をヒョイッとまたいで、おっちゃんに頼み込んだ2週間後には、
バラバラになっていた各パーツをセロテープで復元してくれました。
ココからしばらくかかるんやと言われ、ひと月が経ち、ふた月が経ち、、、なかなかおやつを持って様子をうかがいに行くタイミングもなくなってました。
昨日、補陀落山荘に取り付けるカーテン生地を探しに行ったついでにふらりと寄ると、”できてるで”とおっちゃんの一言。
見事に元通り。
コンコンとたたくと、まるで甘いスイカのように透き通ったいい音が出ます。カケやヒビの入った陶器はくぐもった音がしますが、継いだコップからはいい音が。
このコップは金が似合う。なんとなく、凄みが増した気がします。
ああ、大切にしよう。
60歳手前くらいの職人のおっちゃんは、”儲からへんし、ボクの代でもう終わり”と、やる気のないことばかり言ってきますが、散らかった店内には修理中の有名料亭の名前入りの器が所狭しと並んでいます。商売のイロハの一部を教えてくれたりしますが、私のコップは5ヶ月近くちょっとづつちょっとづつ継いでは乾かし継いでは乾かしをくり返して気にかけてくれてながら、私の払った金額は高いけれど、仕事に対する金額としては絶対安い。嫌がらせのようにたくさんの仕事を持ち込んでみたいけれど、残念ながら私の手元には”直すべき価値のある陶器”という物がない。
値段は決して安くはないですが、もし割った陶器への思い入れをぬぐい去れないならば、ぜひこのおっちゃんを紹介したい。のです。
こういう、美しき職人技を見ると、自分のしている事なんて恥ずかしく思えてきますが、ワタシもいい仕事をしたいという気持ちだけは、職人さんには負けませんよ。
by cosset-cosset
| 2012-05-08 17:40